横浜バリアフリー研究所

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「クルミッ子」カフェのコーヒーへの強いこだわり、美味しさの謎に迫る

クルミッ子ファクトリー カフェラテ

「クルミッ子」でおなじみ、鎌倉紅谷が横浜ハンマーヘッドにオープンした「Kurumicco Factory(クルミッコファクトリー)」。そちらで飲んだカフェラテ、エスプレッソが、思いのほか(失礼!)美味しくて、提供しているコーヒーについてもっと知りたくなりました。

今回に限らず、美味しいコーヒーを飲んだ時に、店員さんにいろいろと質問してみたくなります。

 

「クルミッ子」のカフェで美味しいコーヒーを提供するキーマンに直撃

クルミッ子ファクトリー

クルミッ子ファクトリーに行った時、アシスタントマネージャーの石川紘大(ひろまさ)さんと次のようなやりとりをしました。

「どちらのコーヒー豆を使っているのですか?」
石川さん「聖蹟桜ヶ丘(せいせきさくらがおか)のtak beans(タックビーンズ)のものです」
「以前はどちらのお店で働いてらっしゃったのですか?」
石川さんの答えは……、

・ネルドリップの喫茶店
・大手コーヒーチェーンの最高級ブランド店
・「世界一の朝食」で知られるカフェ
・名古屋の有名カフェの立ち上げ

 

会話を通して、石川さんはコーヒーに精通しているだけでなく、カフェ経験が豊富な方であり、コーヒーだけが特別に好きというよりは、カフェのメニューのひとつとしてコーヒーがある、と位置づけているように感じました。

 

 

 

クルミッ子ファクトリーオープンの約1年前、鎌倉に「Salon de Kurumicco(サロン ド クルミッコ)」がオープンしました。
そちらのオープンにあたり採用したのが、アシスタントマネージャーやカフェに関わるオープニングスタッフだったそう。

サロンドクルミッ子 季節のスイーツプレート

サロンドクルミッ子 季節のスイーツプレート


パティシエが作るスイーツが先にあって、そちらに合わせるドリンクメニューの開発を担当したのが、アシスタントマネージャーとして入社した石川さんです。
つまり……、石川さんは「サロン」「ファクトリー」の両方で美味しいコーヒーを提供しているキーマンということになります。

 

「ファクトリー」での最後の会話で石川さんから

「ファクトリーとサロンでは、コーヒー豆とエスプレッソマシンは同じ物を使っていますが、グラインダーは刃の形状が異なるものを使っています。サロンでもぜひ、エスプレッソを飲んでみてください」

と、言われました。

クルミッ子ファクトリーの様子

クルミッ子ファクトリーの様子

サロン ド クルミッ子の様子

サロン ド クルミッ子の様子

「クルミッ子」がメインのカフェであることを忘れてしまうくらい、ここはコーヒー専門店かと思うくらい、ディープなコーヒー話でした……。

 

私は横浜市内のコーヒー店はある程度知っていますし、都内や全国の有名店であれば、店名を聞くと分かることが多いですが、「tak beans」は全く知らなかったです。

「グラインダーの違いによるエスプレッソの味の違い」って、わかるものなのでしょうか。

そんなディープな話を聞いたら、より深く知りたくなるもので。
そして、「サロン」のほうへも行かないわけにはいかないと。
で、行ってきました。

 

「コーヒーが美味しいだろう」と期待したくなるポイント

美味しいコーヒーを提供しているお店を見分けるのに、いくつかポイントがあると考えています。正確には「美味しいだろう」と期待したくなるポイント、と言ったほうが良いでしょうか。

 

まずは、メニュー。

エスプレッソ、アメリカーノがあって、マキアート、ラテとカプチーノがあるということは……、エスプレッソの抽出と、ミルクのスチーミングの確かな技術があるからこそ提供できるメニューといえます。

サロン ド クルミッ子のドリンクメニュー(一部)

サロン ド クルミッ子のドリンクメニュー(一部)

それらの違いは少々わかりづらいのですが、ミルクの量、ミルクの泡の量を微妙に変えることで分けているメニューです。

したがって、その微妙な調整をするためにマシンを使いこなす技術が必要になるということです。

 

コーヒー=ドリップコーヒーと思いがちですが、サロンもファクトリーもドリップで提供していません。その理由は、ドリップの器具を置くスペースを確保しづらいこと、そして、エスプレッソマシンを扱う技術に加え、ドリップの技術も習得しなければならないので、エスプレッソマシンを使ったコーヒー(=エスプレッソドリンク)だけの提供にしています、とのことでした。

 

メニューの次はマシン。

サロン ド クルミッ子で使用しているのは……、

・LA MARZOCCO(ラ・マルゾッコ)のエスプレッソマシン
・MAZZER(マッツァー)のグラインダー

サロンドクルミッ子のマシン

500軒近くのカフェ巡りをした経験から、 美味しかったお店は「マルゾッコ」が多かったということで。
マシンだけ見ると、「カフェ」ではなく「コーヒー屋」、ちゃんとしたバリスタさんが使っているイメージなので、美味しいことが期待できるなと。
それだけに、しっかり練習しないと使いこなせないマシンとも言えますが。

逆に、置いてあるエスプレッソマシンがハイスペックなセミオートマシン、全自動マシンであれば、エスプレッソを淹れる技術のないスタッフでも、そこそこ美味しく淹れられるようにそれを選んだのかな、と思います。

そして、グラインダーのホッパーに入っているコーヒー豆。

両方のカフェで使っている「tak beans」のコーヒー豆は、同じオリジナルブレンドだそうです。

サロンドクルミッ子で使用している「タックビーンズ」のコーヒー豆

いくつかのコーヒー豆販売店に声を掛けて、結果的に「tak beans」に決めたとのお話でした。
参考までにどんなお店に声を掛けたのか伺うと……、「tak beans」以外は聞いたことのあるお店でした。
どのお店も石川さんとお付き合いがあったそうですが、「tak beans」に決めたのは、オリジナルブレンドを作るにあたって、意思疎通がとれることが決め手だったそうです。

 

石川さんがオリジナルブレンドに求めたものは、

・スイーツに合うコーヒーメニューを作ることのできる焙煎豆
・スッキリと飲めるオリジナルブレンド

文字にするのは簡単で、何となくイメージできそうですが、それを「ブレンド」という形にするのはとても難しいことだと感じます。

クルミッ子ファクトリーで飲んだエスプレッソ

「ファクトリー」で飲んだエスプレッソは、浅くも深くもなく、軽くも重くもなく、苦味もあり酸味もある、バランスの良いものでした。
それに加え、カフェラテでも、アメリカーノでも美味しい。
そして大前提が、スイーツ、とりわけ「クルミッ子」に合うコーヒーであるということ。

 

グラインダーのホッパーに入っているコーヒー豆を見た時に、少しだけ分かったような気がします。
「中煎りの、しっかりと焼けた豆」なので、いずれにも合い、美味しいだろうということが。

 

サロンとファクトリーの「カフェラテ」の違いについて

カフェラテについて伺うと、サロンとファクトリーで提供しているものの違いを教えてくれました。

サロン⇒カフェラテ250cc コーヒー豆20g エスプレッソ抽出量40g 使用量20g
ファクトリー⇒カフェラテ260cc コーヒー豆20g エスプレッソ抽出量25g 使用量25g

サロン ド クルミッ子 カプチーノ

サロン ド クルミッ子 カプチーノ

サロンでは、ミルクの泡の量が異なる「カフェラテ」と「カプチーノ」の両方を提供。コーヒー感が強いものがお好きな場合はカプチーノ、ミルク感が強いものがお好きであればカフェラテをおすすめしている、とのことでした。どちらもサロンで提供しているスイーツに負けない、コーヒーの存在感を打ち出しています。

クルミッ子ファクトリー カフェラテ

クルミッ子ファクトリー カフェラテ

一方、ファクトリーの方は「カフェラテ」のみで、サロンよりも容量が多いため、濃く抽出したエスプレッソを使っています。容量を多くしたのは1杯で満足できる量であり、飲みやすさを求めてとのことだそう。
横浜ハンマーヘッドに来て、クルミッ子をお土産に買い、ちょっとコーヒー1杯飲んで行こうというお客様をイメージしたものだと思われます。

クルミッ子ファクトリー 内観

クルミッ子ファクトリー 内観

私が考える、美味しいカフェラテの3つのポイントは次の3つです。

  1. コーヒーとしての美味しさ
  2. ミルクの美味しさ(泡のきめ細かさ、甘さを感じる温度)
  3. エスプレッソとミルクの一体感

サロンもファクトリーも、この3つのポイントをクリアしていましたし、「ちょうどよい温度」でもありました。

 

そうそう、どちらも「ホットミルク」がメニューにあり、「面白いな」と。カフェラテと同じ、スチームで温めたものなので、ミルクが想像以上に甘く、温度の大切さ、泡の必要性を感じられるだろうと思うからです。

ミルクの温度は60、70℃くらいが一番甘く感じられると言われています。泡については、生クリームをホイップした時をイメージすると分かりやすいでしょうか。
もちろん牛乳そのものについても、色々な商品の中からこだわって選んだものです、とのことでした。

 

「クルミッ子」のカフェのコーヒーのレポートを通して伝えたいこと

何かを知ると、さらに色々と、深く知りたくなりました。

・「サロン」のカフェラテは、イートインとテイクアウトで味が異なるのか?
(カフェラテの量と、それに対するエスプレッソとミルクの割合が異なると思います)

・エスプレッソは、「サロン」と「ファクトリー」で同じ味か?
(グラインダーが異なるため厳密には同じではないですが、それ以外は同じように抽出しているのか)

・アメリカーノの作り方は、サロンとファクトリーで違いがあるか?
(エスプレッソが同じで、提供サイズが異なると「濃い・薄い」の違いだけになってしまうので)

サロン ド クルミッ子 内観

サロン ド クルミッ子 内観

このコーヒーについて長々と記したレポートを通して、何を一番伝えたかったかというと……、コーヒーに対してこれほどまでに強いこだわりを持っているので、

 

美味しいに決まってるじゃん

 

ということです。


コーヒーだけでなく、他のドリンクメニューにもこだわっていて、美味しいと期待できる、ということです。

石川さんは、バリスタのスペシャリストというだけでなく、ドリンク全般のジェネラリストを目指しています、と。ジェネラリスト……幅広い知識や技術、経験を持つ人、という意味です。

 

ということで、また行きたいと思います。

次は、サロンでエスプレッソ、アメリカーノか。それともダージリンでしょうか……。
あっ、モンブランも気になっています……。

※お話を伺った石川紘大さんは2020年8月に鎌倉紅谷を退職されました。取材させていただき、ありがとうございました。

 

2021年10月26日追記:鎌倉本店「Salon de Kurumicco」は一時閉店するとのことです

 

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取材協力:サロン ド クルミッコ