横浜バリアフリー研究所

テーマは《横浜・カフェ・車イス》車イスユーザーが実際に行って、感じたこと、みんなに優しいカフェ情報など

横浜市観光協会が「ユニバーサルツーリズム研修」を開催。車イスサポートや視覚障がい者手引きを体験

横浜市観光協会が令和6年度「ユニバーサルツーリズム研修」を実施

横浜市観光協会が令和6年度「ユニバーサルツーリズム研修」を実施

公益財団法人横浜市観光協会(以下、YCVB)が2024年11月1日に、令和6年度「ユニバーサルツーリズム研修」を帆船日本丸・横浜みなと博物館 訓練センターで開催。観光関連事業者向けに実施したもので、障害の有無に関わらず、全ての方に旅行を楽しんでもらえるよう、対応する方法を学びました。研修の様子をレポートします。

 

 

 

「ユニバーサルツーリズム」とは

「ユニバーサルツーリズム」について説明する渕山さん

「ユニバーサルツーリズム」について説明する講師の渕山 知弘さん

ユニバーサルツーリズムを促進する観光庁のウェブサイトによると、次のように定義されています。

ユニバーサルツーリズムとは、高齢や障がい等の有無にかかわらず、すべての人が安心して楽しめる旅行を指します。

観光庁が実施している「観光施設における心のバリアフリー認定制度」では、ソフト面のバリアフリー対応や情報発信に積極的に取り組んでいる観光施設を認定し、認定マークを交付しています。

同制度は2021年9月にスタートし、2024年9月時点では全国で2322件の施設が認定されています。横浜市では13ヵ所のホテル、観光施設が認定されています。が、横浜ベイエリアは観光地であることを考えるとぜんぜん少なく、YCVBでは、認定基準をクリアするために必要な「研修受講」の機会提供(今回のユニバーサルツーリズム研修)や、「情報発信」などの支援を行っています。

令和6年度「ユニバーサルツーリズム研修」では、ユニバーサルツーリズムアドバイザー 渕山 知弘さん(オフィス・フチ)を講師に迎え、参加した横浜市内の観光関連施設の約30名が、実際の現場で役立つ情報と実技を学びました。

あわせて、当事者の立場から、車いすユーチューバーのねむりさくらさんによるお話、横浜移動サービス協議会の服部一弘理事長による座学研修、電動カート(シニアカー、電動車いす)「JOYカート」の紹介などが行われました。

なぜ今「ユニバーサルツーリズム」?

ユニバーサルツーリズムアドバイザー 渕山さんは、障害者差別解消法が変わり、2024年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されたことを紹介。「前例がない」など事業者側の都合で断ったり、「何かあったら困るから」という漠然な理由で断ったりせず、個々の場面において話し合いをしながら解決策を見出すことが重要と、参加者に呼びかけました。

しかし、すべての物理的なバリアを解消することは多額の費用がかかり難しいため、移動式のスロープを活用するなど「ユニバーサルデザイン」や「心のバリアフリー」で対応することが求められるといいます。

また渕山さんによると、2025年度のユニバーサルツーリズム関連事業の予算要求額は5億円で、2024年度比9.26倍に増額しているとのこと。このことからも、国がユニバーサルツーリズム推進に力を入れていることがわかる、としています。

補助金などを受けるためには、観光庁が推進する「観光施設における心のバリアフリー認定制度」の認定を受けることは必須でしょう、と強調しました。

横浜観光協会では「横浜観光バリアフリー情報」のサイトでさまざまなバリアフリー情報発信していることも紹介しました。

「心のバリアフリー」で車イスでどこへでも

車いすユーチューバーのねむりさくらさんが1人で横浜観光して感じたことを紹介

車いすユーチューバーのねむりさくらさんが1人で横浜観光して感じたことを紹介


続いて、車いすユーチューバーのねむりさくらさんが1泊2日の日程で横浜ベイエリアを観光した様子を紹介。

三溪園を散策したり、横浜中華街で食べ歩きしたり、横浜開港記念会館へは裏手のエレベーターを利用して入館したり、帆船日本丸では車イスを4人でかかえてもらって船内を見学できたことなど、車イスユーザー1人でも横浜観光を楽しめたことを語りました。

「三溪園の公式サイトでは、バリアフリーコースが掲載されていたので車イスでも行けると判断できました。横浜中華街では、受け渡しのカウンターが高かったけれど親切に対応してもらえました。また、シーバス(水上バス)の公式サイトには電動車イスでも乗船できる船や昇降機のサイズが書かれていて参考になりました」と、車イスユーザーの視点から良かった点を紹介。

この横浜を巡った様子はYouTubeチャンネル「ねむりさくらの晴れのち車椅子。時々杖。」で見られます。ねむりさんが車イスでどのようにして横浜散策を楽しんだのか、ぜひご覧ください。

「どう手伝えばよいか」聞いて欲しい

横浜移動サービス協議会の服部一弘理事長は自身の体験を通して、車イスユーザーにどう対応すればよいかをレクチャー

横浜移動サービス協議会の服部一弘理事長は自身の体験を通して、車イスユーザーにどう対応すればよいかをレクチャー

横浜移動サービス協議会の服部一弘理事長からも当事者目線での事例を紹介。服部さんは、脊髄損傷により片手しか動かすことができず、電動車イスで生活しています。車イスから降りるためにはリフトが必要。「片手しかきかないと、1泊の旅行も難しい。簡易リフトが用意されていると『出掛けてみよう』という気になります。エリアに1つ、常備して、いろいろな施設で使い回してはどうでしょうか」と提案。

「車イスは足が悪い人だけの乗り物ではありません。困っていそうだったらどう手伝えばよいか聞いてください」と、多様な車イスユーザーへの声掛けのタイミングについて紹介しました。

実際に体験してみることが大事

目の見えない方には「時計の針の位置で方向を示します」と渕山さん

目の見えない方には「時計の針の位置で方向を示します」と渕山さん

座学の後は、体験研修へ。アイマスクを使用して手引きしたり、車イスにのって段差を超えるコツを教わったり、日常生活や観光地での移動をサポートする電動カート「JOYカート」に乗ったりと、盛りだくさんの内容でした。

参加者がアイマスクを使用して手引きする様子

参加者がアイマスクを使用して手引きする様子

車イスで段差を超えるには「ティッピングレバーを踏んで前輪を浮かせ、後輪を段差にあてて押し上げます」と、車イスでの段差を越える対応をレクチャー。

順番に車イスに乗って段差を越えるコツを学びました

順番に車イスに乗って段差を越えるコツを学びました

電動カート「JOYカート」はコンパクトなので電車や車にも積めるとのこと

電動カート「JOYカート」はコンパクトなので電車や車にも積めるとのこと

近年、坂道の多い観光地でも導入されているそう。力強く坂道を上っていく様子を披露

近年、坂道の多い観光地でも導入されているそう。力強く坂道を上っていく様子を披露

“車イスユーザー”と一括りにするのではなく、普段はゆっくり歩けるけれど長い移動の時だけ車イスを使う方、電動車イスの方、普段は車イスにのっているけれど少しだけ立つことができる方など、100人いれば100通りの対応があります。車イスにもぜひ乗ってみてください。体験することが大事です」と、渕山さんは締めくくりました。

横浜市観光協会の「ユニバーサルツーリズム研修」は年に1回、実施しています。横浜市内の観光関連事業者向けに広く募集を行っていますので、次年度に参加してみてはいかがでしょうか。

【関連記事】

www.barrierfree.yokohama

www.barrierfree.yokohama

www.barrierfree.yokohama